editor's museum
小宮山量平の
編集室



ロシア企画室

 トルストイ ショートセレクション『三びきのクマ』が刊行されました。
 なぜ今、“トルストイ” か───。
 その問いに答えるかのような父の文章が遺されていました。
 父は自身が編集したトルストイの『愛についての10話』(1985年 理論社刊 “10代の本セレクション全26冊”)の “まえがき” にこう記しています。

今 「トルストイ体験」を

 今ふたたび「トルストイ体験」が、わが若者たちの心を支えるときが来ているようです。
 (中略)
 昭和十年代に戦争の危機が拡大するのにつれて、わが若ものたちが深い挫折や転向に苦しんだとき、平和主義の灯をかかげてくれたのもトルストイでありました。
 そして今、わが国のすさまじい管理社会化の重圧に、若ものたちの魂の荒廃が深まっているかと思えるとき、正に人間の不屈さを語りかけてくれるのがトルストイでしょう。
 この偉大な作家が、いささかも古びることなく、各世代の若ものたちを励ましつづけるのは、なぜでしょう。なんと言ってもトルストイは、平凡なひとりひとりの民衆が、最もつつましく、最も力強く、人間の魂の高貴さを守りぬいているさまざまの姿を、探り当てる名人だからでしょうか。しかも、そんな人びとの歩みを、個々の人間を超えた偉大なものとしての神が、くまなく見つめていることを、じつに倦むこともなく語りかけているのです。(後略)

 父の言葉は、三十年以上もの時を経た今も生き続け、心にひびくのです。
 そして『愛についての10話』と題した父のその思いを受け継ぐように、今回『三びきのクマ』他7つの短編を訳した小宮山俊平は、“あとがき” で語っています。

トルストイは「愛」に生き、「愛」を伝導しつづけた作家です。村人を愛し、その物語を書きました。村のこどもたちを愛し、彼らの未来に期待し、教育に心をくだきました。
「愛」は人間ばかりか自然環境にも、動物にも向けられました。~ 没後百年以上過ぎてもトルストイが広く世界中で読まれるのは、とにかく読んで面白いからです。
 現在(いま)を生きる多くのこども達に、そして多くの若ものたちに、トルストイの「愛」が届きますように・・・・・・。
2018.2.21 荒井 きぬ枝
エディターズミュージアムのブログ
「父の言葉をいま・・・その124」



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ロレンス ショートセレクション『二番がいちばん』  
ジャック・ロンドン ショートセレクション『世界が若かったころ』  
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